バレーボール中継を見ていて、こんなことが気になったことはありませんか?
🇨🇳中国代表の「朱婷」は「シュ・テイ」。
🇰🇷韓国代表の「金軟景」は「キム・ヨンギョン」。
これに違和感を持たれた方はいませんか?🤔
「シュ・テイ」は日本の音読みで、中国では「ジュ・ティン」なので、本人に「シュ・テイ」と呼んでも伝わりません。
一方「金軟景」は日本の音読みの「キン・ナンケイ」とは読まずに、韓国読みの「キム・ヨンギョン」と呼ばれています。
実は、この「選手の名前をどう読むのか」という問題には、スポーツ中継だけではなく、日本と中国・韓国の歴史や文化、そしてメディアごとのルールが関係しています。
今回は、バレーボール選手を例に、この少し不思議な「名前の読み方」を整理してみます。
中国人選手はなぜ「日本語読み」なのか?
まず、中国人選手の名前を日本のスポーツ中継で聞いてみると、
朱婷 → シュ・テイ
張常寧 → チョウ・ジョウネイ(中国読み:ジャン・チャンニン)
袁心玥 → エン・シンゲツ(中国読み:ユエン・シンユエ)
といった具合に、日本語の音読みで読まれることが多いですよね。
これは、日本語における漢字の読み方が関係しています。
日本では、中国から伝わった漢字を日本語の中に取り入れ、その際に日本独自の音読みが定着しました。
そのため、日本のメディアでは中国人の名前についても、漢字を日本語の音読みで読むという慣習が長く続いてきました。
一方、韓国人選手の場合は、
金軟景 → キム・ヨンギョン
李多領 → イ・ダヨン
朴正雅 → パク・ジョンア
というように、韓国語の発音で読むのが一般的です。
「中国も漢字なのに、なぜ韓国だけ違うの?」
ここが一番気になるところです。
実は昔は韓国人の名前も「日本読み」だった
現在では当たり前のように「キム・ヨンギョン」と呼んでいますが、実は昔から韓国人を韓国読みしていたわけではありません。
かつて日本のメディアでは、韓国人の名前も漢字を日本語読みするケースがありました。
大きな転換点となったのが1984年です。
当時の韓国大統領・全斗煥(チョン・ドゥファン)が来日した際、韓国側から人名を韓国語の発音で読むことを求める動きがあり、その後、日本の報道機関でも韓国人名を現地の発音で読むことが定着していきました。
ここは歴史の話なので詳しく掘り下げるとかなり長くなりますが、ポイントは一つ。
「韓国人の名前は韓国語読み」という現在の慣習は、昔から絶対的に決まっていたわけではないということです。
そして、この背景を理解するうえで重要なのが「相互主義」です。
「日本ではどう読むか」だけではなく「相手国ではどう読むか」
日本と韓国では、現在、
日本 → 韓国人名を韓国語読み
韓国 → 日本人名を日本語読み
という関係が基本になっています。
一方、日本と中国では、
日本 → 中国人名を日本語読み
中国 → 日本人名を中国語読み
という形が基本です。
つまり、国によって「相手の名前をどう読むか」という考え方そのものが違うわけです。
これを知ると、冒頭の疑問も少し分かりやすくなります。
「中国人だから日本語読み」「韓国人だから韓国語読み」という単純な話ではありません。
歴史的に形成されてきた、それぞれの国との人名の扱い方が現在のスポーツ中継にも残っているのです。
では、中国では石川祐希や髙橋藍を何と呼ぶ?
ここで日本人選手の名前を中国側から見てみましょう。
中国語では、石川祐希は「石川祐希」と表記されますが、発音は日本語の「いしかわ・ゆうき」ではありません。
中国語のピンインでは、
Shíchuān Yòuxī
となります。
日本語で無理やり近い音にすると、「シーチュアン・ヨウシー」といった感じです。
髙橋藍も同様です。
中国語では「高桥蓝」と表記され、
Gāoqiáo Lán
「ガオチャオ・ラン」に近い発音になります。
つまり、中国の人からすれば「イシカワ・ユウキ」でも「タカハシ・ラン」でもないわけです。
日本では中国人選手の名前を日本語読みする一方、中国では日本人選手の名前を中国語で読む。
まさに先ほどの「相互主義」がここにも表れています。
「王一梅」はどう読む? バレーボールファンなら気になる名前
ここで、少しマニアックな話を。
過去の中国女子代表には、強烈なスパイクで知られた「王一梅」という選手がいました。
この名前、日本語の音読みで素直に読めば「オウ・イチバイ」あるいは「オウ・イツバイ」となります。
ところが、当時の民放中継では「オウ・イメイ」と呼ばれていました。
中国語の発音である「ワン・イーメイ」を日本語っぽく取り入れたような、独特の読み方です。
正直、
「オウイメイのほうが選手名っぽい」
と思った人も多かったのではないでしょうか(笑)。
一方、NHKでは「オウ・イチバイ」と読まれていました。
当時すでに民放中継で「オウ・イメイ」という呼び方が広く知られていたため、SNSなどでは「オウ・イチバイって誰?」という反応が出たこともありました。
同じ選手なのに、テレビ局によって名前が違う。
これも、スポーツ中継の「名前の読み方」が意外と統一されていないことを象徴するエピソードです。
そして現在、中国人選手の名前事情はさらに複雑に
ここ数年、バレーボールでは中国人選手が日本のVリーグ、そしてSVリーグでプレーするケースが増えてきました。
すると、今度は別の問題が出てきます。
日本のクラブチームが、所属する中国人選手を中国語読みで登録・紹介するケースが増えてきたのです。
例えば、アジア選手権にも出場している江川や彭世坤が良い例です。
彼らが日本のリーグの所属するまで、中継では
江川 → コウ・セン
彭世坤 → ビョウ・セコン
と日本読みで呼ばれていましたが、これでは本人に伝わりません。
そのため日本のチームでは本来の読み方である
江川 → ジャン・チュアン
彭世坤 → ポン・シーコン
と中国読みで統一しています。
一方、これまで日本のリーグでプレーしたことがない中国人選手については、従来どおり日本語の音読みで紹介される事が多く、
同じ中国代表の中に、「日本読み」と「中国読み」の選手が混在することがある。
これはなかなかややこしいです。
昨日まで「○○」と呼ばれていた選手が、日本のクラブに加入した途端に「△△」になる。
そして代表戦では、選手Aは中国読みなのに、選手Bは日本読み。
「いや、どっちやねん!」となります(笑)。
アジア選手権でも実際に混じってますよね。
個人的には、もう中国語読みで揃えてもいいと思う
もちろん、これは「どちらが正しい」という話ではありません。
日本語の音読みには長い歴史がありますし、これまで日本のスポーツ中継で使われてきた呼び方にも意味があります。
ただ、現在は海外選手が日本のリーグでプレーすることも珍しくありません。
実際に日本でプレーしている選手をチームが中国語読みで紹介しているのであれば、代表戦でもその呼び方を引き継いだほうが、ファンにとって分かりやすい場合もあるでしょう。
個人的には、
「中国人選手は原則として中国語読みで統一」
でもいいのではないかと思っています。
もちろん、これはあくまで個人的な意見です。
これから国際交流がさらに進んでいけば、「日本でどう読むか」よりも「本人が普段どう名乗っているか」を重視する流れになる可能性は十分あるでしょう。
バレーボール中継は「名前の歴史」まで見えてくる
普段は何気なく聞いている、
「シュ・テイ」
「キム・ヨンギョン」
「オウイメイ」
「ジャン・チュアン」
「ポン・シーコン」
という選手名。
しかし、その裏側を調べてみると、日本と中国、韓国がどのように名前を扱ってきたのかという歴史まで見えてきます。
そして、海外でプレーする日本人選手を見れば、今度は自分たちの名前が現地でどのように聞こえているのかも分かります。
石川祐希は中国では「シーチュアン・ヨウシー」。
髙橋藍は「ガオチャオ・ラン」。
日本では当たり前の「イシカワ」「タカハシ」が、国境を越えた瞬間に別の響きになる。
そう考えると、スポーツ中継で聞こえてくる選手名が、ちょっと面白く聞こえてきませんか?😊
次にバレーボール中継を見るときは、ぜひ選手のプレーだけでなく、**「この名前、なぜこの読み方なんだろう?」**にも注目してみてください。
意外と奥が深い世界かもしれません。


